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生物の勉強法 第3話「この問題、何を聞いているのかがわからない」の原因は?

今回のテーマは、次の4つの項目のうちの2です。

2.「解説を読むとわかるけれど、どうしてそれに気がついたの?」

この項目、ちょっとわかりにくいですかね。次のように言い換えるとわかるでしょうか?

「この問題、何を聞いているのかなあ? 何を答えたらいいの?」となるでしょうか。

こうなってしまう原因は次の2つです。

①必要事項が暗記しきれていない。

②生物学的思考力が不足している。

①なのですが、これは前回説明しましたね。もっと暗記すればいいわけです。

問題は②ですね。「生物学的思考」って何でしょう?

では次の例題を解いてみましょう。

さて、どうでしょう?「『この構造の現れ方』って何?  何を聞いているの?」

「ちょっと何言ってんのかわんない」と思ったでしょうか。

それは生物学的思考が不足しているからです。

ここでちょっと次の図を見てください。

昆虫とヒトには共通の祖先(X)がいました。しかし大昔に分岐して、今は昆虫とヒト

という全く違う種になっているわけですね。ところで、どちらの種も共通して

センサー細胞を持っています。さて、みなさんはこの図を見てどのように感じた

でしょうか? 「センサー細胞って何? そんなの習ってないから知らない」

と感じたでしょうか?でも、そこじゃあないんですよ。

皆さんがセンサー細胞を知らないのは分ってます(「センサー細胞」というのは

消化管内壁にあって毒物などをキャッチする細胞です。知らなくてかまいませんよ)。

こんなとき、出題者はそこを聞いているのではないのです。では何を聞いているのか?

それは「共通祖先(X)がセンサー細胞を持っていたから、現在でも昆虫とヒトが

センサー細胞を持っているのか」、それとも「Xはセンサー細胞を持っていなかった

けれど、それぞれ違う進化の過程をたどる間に偶然同じ細胞を持つに至ったのか」

…と考えることができるかを試しているのです。

つまり、「子孫(Y・Z)が同じ構造アを持っている」とき…

 

・・・それは「共通祖先(X)が構造アを持っていたからその子孫たち(Y・Z)も

構造アを持っている」のか、それとも「共通祖先はその構造を持っていなかった

けれど、それぞれの進化の過程で偶然同じ構造を持つに至った」のか…と瞬時に

反応せよ、ということなのです。

これが生物学的思考の1つなのです(生物学的反応と言ってもいいですね)。

前者の例には、「鳥類と哺乳類はどちらも脊椎を持っている」というのが

ありますね。それは「鳥類と哺乳類の共通祖先の魚類の段階で脊椎を持っていたから」

なわけです。後者の例には「イカ・タコも脊椎動物もカメラ眼を持っている」という

のがあります。それは「イカ・タコと脊椎動物が進化の過程でたまたまカメラ眼を

獲得した」わけですね。

では、改めてさっきの問題を見てみましょう。

もう何を聞いているのかわかりますよね。

図1・2それぞれは「環形動物と節足動物はどちらも体節構造を

持っている」が、それは「共通祖先が体節構造を持っていたから」なのか、

それとも「それぞれの進化の過程でたまたま体節構造を持つに至った」のか。

それぞれどちらでしょうかと聞いているのです。

図1の場合、環形動物と節足動物の共通祖先であるCの段階で体節構造ができた

と考えるのが自然ですね。

Aの段階で体節構造ができたのであれば扁形動物も軟体動物も体節構造を持って

いるはずです。Bの段階で体節構造ができたのであれば、軟体動物も体節構造を

持っているはずです。

図2の場合、体節構造を持つ環形動物と節足動物の共通祖先はDです。この段階で

体節構造を持ったとすれば、扁形動物も軟体動物も体節構造を持つはずです。

EやFの段階で体節構造ができたのだとすると、節足動物は体節構造を持たない

はずです。従って図2の場合は、環形動物はFの段階で軟体動物と分岐した後に

体節構造を獲得し、節足動物はDの段階で扁形・軟体・環形動物と分岐した後に

体節構造を獲得したと考えるのが自然です。

つまり、「環形動物・節足動物それぞれの進化の過程でたまたま体節構造を持つに

至った」と考えるのが自然です。

解答例:

図1の場合、環形動物と節足動物の共通祖先の段階で体節構造が現われたと

考えられる。図2の場合、環形動物の体節構造は軟体動物と分岐した後に、

節足動物の体節構造は、扁形・軟体・環形動物と分岐した後に現われたと

考えられる。

 

さて、この「生物学的思考」、とても大切なので次回も例を交えて説明しようと

思います。

☆「生物学的思考」は、大堀の参考書「大堀先生、高校生物をわかりやすく

教えてください(上巻・下巻)」に惜しげもなくふんだんに書いてあります。

持っている学生さんは、もう一度じっくり読みなおして、どの部分かを

探してみましょう。

☆代ゼミの大堀の講義では、このような「生物学的思考」を君たちの脳に

どんどんインストールしていきます。大堀の講義を受講する予定の学生さん、

楽しみにしていてくださいね。