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生物の勉強法(その5) 「論述問題対策」

今回は次の4つの項目の…

4.「論述問題って解答を読むとわかるけれど、いざ自分で書こうとするとやっぱり書けない」ですね。こうなってしまうのは…

①生命現象の正しい理解が不足している(または覚えておくべきことが暗記し切れていない)。

②表現法が暗記されていない。

・・・が原因です。

ではいつものように例題を解いてみましょう。これは2022年2月、大阪大学で出題されたものです。

さて、どうでしょう?

まずは①生命現象の正しい理解が不足している(または覚えておくべきことが暗記し切れていない)ですが、この問題では「覚えておくべきことが暗記し切れていない」となります。次の図を見てみましょう。

この図・語句は暗記事項です。というか、知ってますよね。さらに高音・低音をそれぞれ基底膜のどの部分で受容しているかも暗記事項です。それは次のようになりますね。

あとは②「表現法が暗記されていない」です。つまり、上の図中の「この辺り」をどう表現するかです。この場合、次のように表現すればいいでしょう。

もちろん「基部側」「先端側」は生物用語ではありません。他の表現でも構わないわけです。要するに採点者に伝わればいいのです。しかしだからといって、試験本番でいちいちこうした表現をその場で考えていたら時間が足りなくなってしまうでしょう。したがってある程度、こういう場合はこう表現するというものを頭の中に揃えておかなくてはなりません。

解答例

高音はうずまき細管の基部側、低音はうずまき細管の先端側を最も大きく振動させる。

 

次の問題でもう少し②「表現のしかた」を勉強してみましょう。

まずは①「生命現象の正しい理解」です。どうしてこういう形になるのかというと、それは次の理由によるわけです。酵素が反応を促進する際、一度基質と結合して酵素基質複合体になりますね。そして酵素基質複合体がたくさんできるほど反応がたくさん起こる。つまり、反応速度(v)は「単位時間内にできる酵素基質複合体の数」で決まるわけです。次の図を見てみましょう。ア→イでは基質濃度(s)が大きくなるつに連れて酵素基質複合体が増えていますね。だから反応速度(v)も大きくなっていく。ところが、基質濃度(s)がかなり大きくなったウ付近は、もうこれ以上いくら基質濃度(s)を大きくしても酵素基質複合体の数は増えません。これすなわち、これ以上反応速度(v)は大きくなりません。というわけで「一定になる」のです。

では②「表現法」です。もうここまで①「生命現象の正しい理解」ができていれば、表現法は浮かんでくるのではないでしょうか。とにかく「酵素基質複合体が増えなくなったから」なわけですが、どうして増えなくなったのかも説明した方がいいでしょう。

解答例1

「すべての酵素が基質と結合してしまい、酵素基質複合体が増えなくなるから」。

解答例2

「すべての活性部位が基質で飽和してしまい、酵素基質複合体が増えなくなるから」

 

ちょっとこれを応用してみましょう。次の例題を解いてみましょう。

細胞膜にはいろいろな膜タンパク質がはまっているわけですが、その1つが担体です。キャリアーともいいますね。グルコースは水溶性で、そのままではリン脂質二重層を透過できません。ですから、担体によって受動輸送されるのです。

すると、あとはグラフの形から「ああ、これは酵素のs-vのグラフと同じだな」と気がつけばいいのです。表現法としては「飽和」を使うと便利です。なお、「酵素基質複合体が増えなくなるから」に相当する部分は書かなくても大丈夫でしょう。

解答例:担体がグルコースで飽和したから。

 

最後にもう一題解いてみましょう。

まずは①「生命現象の正しい理解」ですが、活動電流は…

・・・ですよね。細胞の外側と内側で活動電流の向きが反対です。あとは、「どっちからどっちに流れるか」をどう表現するかですね。これは次のようにしたらいいでしょう。

というわで、「興奮部」「隣接部」と表現すればいいのです。

解答例:細胞外では隣接部から興奮部へ、細胞内では興奮部から隣接部に向かって流れる。

 

どうでしょう? これまで論述対策で「①生命現象の正しい理解」「②表現法を覚える」という視点で対策していましたか? 今後の勉強の参考にしてくださいね。

 

☆代ゼミの大堀の講義では「①生命現象の正しい理解」「②表現法」が自然に身に着くようにしていきます。受講予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね♪

☆参考書「大堀先生 高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」でも①②が身に着くように説明しています。文章のいろいろな場所で「~と表現する」ってありますよね。これは論述対策のためなのです。この参考書を持っている人は探してみてくださいね。