コラム・お知らせ

生物の勉強法(暗記のしかた その4) 「最も重要なものを細かく覚える。残りのものはそれと比べてどうなのか?」

次の例題を解いてみましょう。

さて、分かったでしょうか? 解答は②。ただの暗記問題ですね。覚えていればできるし、覚えていなければできない。ただそれだけです。ところでこの問題は赤血球のことを聞いているのですが、他の血球、つまり白血球や血小板の数値も暗記しておかなくてはならないのでしょうか? もちろん暗記しておかなくてはなりません。次の表を見てみましょう。

教科書・資料集などによく載っている表ですね。ではこれらをどう暗記するのでしょうか? 「赤血球の大きさは7~8μm、白血球は6~24μm、血小板は2~4μm…」というよに覚えるのでしょうか? だったらいちいちこのサイトで書きませんよね。まずは最も重要な血球を覚えるのです。

では、赤血球・白血球・血小板のうち、最も重要な血球は何でしょうか? 次のように考えればわかるはずです。

「いま、血小板が体内から消え去ったらどうなるでしょうか?」。そう、血管が破れたときその部分がふさがらなくなりますよね。破れ方にもよりますが、出血多量で死ぬ可能性もあります。でもとりあえず、血管が破れるまでは生きていけますよね。

では「いま、白血球が体内から消え去ったらどうなるでしょうか?」。そう、病原体が侵入しても排除できなくて死んでしまうかもしれません。でもとりあえず、病原体が侵入して来るまでは生きていけますよね。

では、「いま、赤血球が体内から消え去ったらどうなるでしょうか?」。赤血球がなくなると体内の細胞たちは酸素を受け取れなくなります。ですからほぼ即死(特に脳の神経細胞が大きなダメージを受けます)。おそらく5分ともたないでしょう。

ここまでくれば赤血球・白血球・血小板のうち、最も重要な血球はどれかわかりますよね。赤血球ですね。赤血球は今、この瞬間を生きるのに必要な血球です。白血球と血小板はこれから先も生き続けるのに必要な血球です。

というわけで、赤血球が最も重要。入試でも最も出題されます。まず赤血球の数値は細かくしっかり覚えるのです。ただし、ちょっと注意。「赤血球の大きさは7~8μm」なんですが、7も8もそんなに違いはないですよね。だったら「赤血球の大きさは7μmくらい」でよくないですか? 7より8が好きなら「赤血球の大きさは8μmくらい」でもいいです。同様に「数は500万個/m㎥くらい」、「寿命は100日くらい」とキリよくいきましょう。ちなみに、個数の単位は重要ですよ。「個/m㎥」ですからね。

では、他の血球はどうしましょうか? それは「最も重要な赤血球と比べてどのくらいなのか?」と覚えるのです。

白血球なら「大きさは赤血球の1~3倍くらい」と覚えます。そして個数ですが、赤血球は「百万の位」でしたね。それに比べて白血球はめちゃくちゃ少なくて「千の位」です。3500~9000なんて覚えなくていい、これで十分です。というわけで「白血球の個数は数千個/m㎥」と暗記しましょう。なお、寿命については次回説明します。

同様にして、血小板なら「大きさは赤血球の半分以下・個数は数十万個/m㎥、寿命は赤血球の1/10」という具合です。

というわけで、今回は「最も重要なものを細かく覚えて、残りのものはそれと比べてどうなのか」でした。次回は、同じく血球をテーマにして「正しく理解すれば暗記しやすくなる」というお話です。お楽しみに。

☆代ゼミの大堀の講義では、ただ「これを暗記しろ」ではなく、どうしてそうなのか? なぜそうなのかもバンバン説明します。受講予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね♪

☆参考書「大堀先生 高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」でもそのように説明しています。ぜひ活用してください。

生物の勉強法(暗記のしかた その3) 「右脳で暗記する」

今回もいきなり例題です。

この問題の類題が今年(2022年2月)の北海道大学で出題されましたが、さて例題はできたでしょうか?

やはり暗記問題なのですが、どう暗記しましょうか。これは前回の「ホルモンの成分」の…

と一緒に暗記してしまうと効率がいいです。つまり…

・・・という具合です。すなわち

・・・という「“形”で暗記」するわけです。いろいろな語句・言葉は左脳に蓄積されます。ところが皆さんの左脳はもう英単語でいっぱいなはずです(いっぱいではなくてもこれから詰めていかなくてはなりません)。ですから、もう生物用語は入りにくい。そこでまだまだ余裕のある右脳に詰め込むのです。言い換えると「右脳で暗記する」ということです。ただし、右脳は「言語」は扱えません。そこで「図」「形」にするのです。みなさんもいろいろ工夫して「形で暗記(=右脳で暗記)」してみましょう。

解答:①・②・④・⑥・⑦・⑨

☆「“形”で暗記」は他にもありますが、代ゼミの大堀の講義ではそれらをバンバン説明します。受講予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね♪

☆参考書「大堀先生 高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」でも説明されています。ぜひ活用してください。

生物の勉強法(暗記のしかた その2) 「少ない方を暗記する」

今回はいきなり例題です。解いてみましょう。

さて、どうでしょう? ホルモンの成分はよく問われます。だから少なくとも教科書に載っているホルモンの成分くらいは暗記しておかなくてはなりません。が、だからといって「インスリンはタンパク質で、糖質コルチコイドはステロイドで・・・」と1つ1つ暗記していったらきりがありません。そこで「少ないのを覚えておいて、あとはみんな〇〇」というようにするのです。次の表を見てみましょう。

ホルモンの成分にはタンパク質・アミン・ステロイドがあります。このうち、アミンとステロイドは少ないのでこの2つを暗記してしまって、「残りのホルモンはみんなタンパク質」とすればいいのです。

ちなみに、アミンというのは次の図のように…

・・・アンモニア(NH3)の-Hの部分が別の物質に変化しているものの総称名です(アンモニアもアミンに含めます)。

それから、雌性ホルモン・雄性ホルモンは教科書にはあまり載っていませんが、けっこう出題されるので知っておいた方がいいです。

解答:②・④・⑥・⑦・⑨

☆「少ないのを覚えておいて、あとはみんな〇〇」は他にもありますが、代ゼミの大堀の講義ではそれらをバンバン説明します。受講予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね♪

☆参考書「大堀先生 高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」でも説明されています。ぜひ活用してください。

生物の勉強法(暗記のしかた その1) 「必要なものを暗記する」

生物の勉強法(その1~5)を読んでくださった方、ありがとうございます。さて、読んでみてどう感じたでしょうか? 「生物ってまずは暗記だなあ」と感じましたでしょうか? そうなんです。その通りです。そこで、これから何回かに分けて「暗記のしかた」について説明してきますね。

ではさっそく、次の例題を解いてみましょう。

この問題はセンター試験の過去問ですが、さて、これどうしましょうか? 知っていればいいのですが、知らなくて解けなかった人はどうしましょう。「ゾウリムシは150μmである」と暗記するのでしょうか? でも、そんなことをしていたらきりがありませんよね。だいたいこの地球上にゾウリムシが何匹いるか知りませんが、全部150μmなのでしょうか? そんなわけありませんよね。分裂したばかりのものはもっと小さいし、「250μm」と載っている文献を見たこともあります。それにゾウリムシには種類があって大きいものや小さいものもいます。つまり、「ゾウリムシは150μmである」と暗記してもそれは無駄なわけです。実はこの大堀、この問題を初めて見たときゾウリムシが150μmであることは知りませんでした。でも解けました。なぜなら「必要なこと」をちゃんと覚えていたからです。では、必要なことって何でしょう? まずは「μm」という単位(「マイクロメートル」とか「ミクロメートル」、または「ミクロン」と読みます。)。大堀は「1μm=1/1000mm」と知っていました。そしてもう1つ、「ゾウリムシは肉眼でかろうじて見える」ということも知っていました。つまり、この問題は選択肢から「肉眼でかろうじて見える大きさ」を探すだけの問題なのです。「①1500μm」は1.5mmですから肉眼で十分見えます。「③0.15μm」は0.015mmですから、これは肉眼では見えませんね。「ということは②が正解だな」…とわかってしまうのです。というわけで、ここで「必要なこと」、つまり暗記すべきことは次の2点、「ゾウリムシは肉眼でかろうじて見える」・「1μ」m=1/1000mm」です。

こんなふうに、何でもかんでも暗記すればいいといいものではなく、「必要なこと」を暗記していかなくてはならないのです。

解答:②

というわけで、今回はこのくらいにしておきましょう。次回は、暗記のしかた(その2)「少ない方を覚える」の予定です。

☆代ゼミの大堀の講義では「必要なこと」が自然に身に着くようにしていきます。受講予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね♪

☆参考書「大堀先生 高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」でも「必要なこと」が身に着くように説明しています。ぜひ活用してください。

生物の勉強法(その5) 「論述問題対策」

今回は次の4つの項目の…

4.「論述問題って解答を読むとわかるけれど、いざ自分で書こうとするとやっぱり書けない」ですね。こうなってしまうのは…

①生命現象の正しい理解が不足している(または覚えておくべきことが暗記し切れていない)。

②表現法が暗記されていない。

・・・が原因です。

ではいつものように例題を解いてみましょう。これは2022年2月、大阪大学で出題されたものです。

さて、どうでしょう?

まずは①生命現象の正しい理解が不足している(または覚えておくべきことが暗記し切れていない)ですが、この問題では「覚えておくべきことが暗記し切れていない」となります。次の図を見てみましょう。

この図・語句は暗記事項です。というか、知ってますよね。さらに高音・低音をそれぞれ基底膜のどの部分で受容しているかも暗記事項です。それは次のようになりますね。

あとは②「表現法が暗記されていない」です。つまり、上の図中の「この辺り」をどう表現するかです。この場合、次のように表現すればいいでしょう。

もちろん「基部側」「先端側」は生物用語ではありません。他の表現でも構わないわけです。要するに採点者に伝わればいいのです。しかしだからといって、試験本番でいちいちこうした表現をその場で考えていたら時間が足りなくなってしまうでしょう。したがってある程度、こういう場合はこう表現するというものを頭の中に揃えておかなくてはなりません。

解答例

高音はうずまき細管の基部側、低音はうずまき細管の先端側を最も大きく振動させる。

 

次の問題でもう少し②「表現のしかた」を勉強してみましょう。

まずは①「生命現象の正しい理解」です。どうしてこういう形になるのかというと、それは次の理由によるわけです。酵素が反応を促進する際、一度基質と結合して酵素基質複合体になりますね。そして酵素基質複合体がたくさんできるほど反応がたくさん起こる。つまり、反応速度(v)は「単位時間内にできる酵素基質複合体の数」で決まるわけです。次の図を見てみましょう。ア→イでは基質濃度(s)が大きくなるつに連れて酵素基質複合体が増えていますね。だから反応速度(v)も大きくなっていく。ところが、基質濃度(s)がかなり大きくなったウ付近は、もうこれ以上いくら基質濃度(s)を大きくしても酵素基質複合体の数は増えません。これすなわち、これ以上反応速度(v)は大きくなりません。というわけで「一定になる」のです。

では②「表現法」です。もうここまで①「生命現象の正しい理解」ができていれば、表現法は浮かんでくるのではないでしょうか。とにかく「酵素基質複合体が増えなくなったから」なわけですが、どうして増えなくなったのかも説明した方がいいでしょう。

解答例1

「すべての酵素が基質と結合してしまい、酵素基質複合体が増えなくなるから」。

解答例2

「すべての活性部位が基質で飽和してしまい、酵素基質複合体が増えなくなるから」

 

ちょっとこれを応用してみましょう。次の例題を解いてみましょう。

細胞膜にはいろいろな膜タンパク質がはまっているわけですが、その1つが担体です。キャリアーともいいますね。グルコースは水溶性で、そのままではリン脂質二重層を透過できません。ですから、担体によって受動輸送されるのです。

すると、あとはグラフの形から「ああ、これは酵素のs-vのグラフと同じだな」と気がつけばいいのです。表現法としては「飽和」を使うと便利です。なお、「酵素基質複合体が増えなくなるから」に相当する部分は書かなくても大丈夫でしょう。

解答例:担体がグルコースで飽和したから。

 

最後にもう一題解いてみましょう。

まずは①「生命現象の正しい理解」ですが、活動電流は…

・・・ですよね。細胞の外側と内側で活動電流の向きが反対です。あとは、「どっちからどっちに流れるか」をどう表現するかですね。これは次のようにしたらいいでしょう。

というわで、「興奮部」「隣接部」と表現すればいいのです。

解答例:細胞外では隣接部から興奮部へ、細胞内では興奮部から隣接部に向かって流れる。

 

どうでしょう? これまで論述対策で「①生命現象の正しい理解」「②表現法を覚える」という視点で対策していましたか? 今後の勉強の参考にしてくださいね。

 

☆代ゼミの大堀の講義では「①生命現象の正しい理解」「②表現法」が自然に身に着くようにしていきます。受講予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね♪

☆参考書「大堀先生 高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」でも①②が身に着くように説明しています。文章のいろいろな場所で「~と表現する」ってありますよね。これは論述対策のためなのです。この参考書を持っている人は探してみてくださいね。

ひらめき問題 「副腎皮質は何胚葉由来か?」 

前回の「生物の勉強法(その4)」で「副腎皮質は何胚葉由来か?」という問題を出しましたね。

ひらめいたでしょうか?

解答は「中胚葉由来」です。次のようにひらめくことができれば解けますね。

 

副腎皮質は糖質コルチコイド・鉱質コルチコイドを分泌する→コルチコイドはステロイド系のホルモンだ→ステロイド系のホルモンには他にテストステロン・アンドロゲン・プロゲステロン・エストロゲンなどがある→これらは生殖腺(精巣・卵巣)から分泌される→生殖腺は中胚葉由来だ→ということは副腎皮質も中胚葉由来なのではないか?

 

☆生殖腺が中胚葉由来であることを載せている資料集などは少ないとは思いますが、知っておいた方が絶対にいいです。

☆精巣からは雄性ホルモン(テストステロン・アンドロゲン)が、卵巣からは雌性ホルモン(プロゲステロン・エストロゲン)が分泌されるというのは暗記事項です。これらのホルモンは教科書にはあまりに載っていません。が、なんだかんだいって入試ではよく出題されます。2022年2月の北海道大学の問題ではテストステロンがテーマの問題が出題されました。

☆ステロイド系のホルモンを知らなくても「コルチコイド」は知っていますよね。コルチコイドは最後に「~オイド」がつく。ステロイドも最後に「~オイド」がつく。「だから類似物質」なのはわかりますよね? 同様に「テストステロン」には「ステロ」、「プロゲステロン」にも「ステロ」がつきますね。どちらも「ステロ」イドですね。

なんでも暗記しようとするのではなく、類推するクセをつけよう!!

生物の勉強法(その4) 「ひらめき力」って何だろう?

さて、今回は次の4つの項目の…

 

 

 

 

 

3.「これは暗記事項なのか? それとも、その場で考えて解くのか?」ですね。

皆さんは問題を解いていて「こんなことまで暗記しておかなくてはならないのかなあ? こんなの教科書にも資料集にも載ってないし…」と思ったこと、ありますよね。その原因は

①必要事項が暗記し切れていない。

②ひらめき力が不足している。

となります。

 

さて、②「ひらめき力」って何なんでしょう? では例のごとく次の問題を解いてみましょう。

問1 副腎髄質は何胚葉由来か答えよ。

問2 リンパ球の1つであるB細胞は核の割合が大きく細胞質がほとんどない。しかし、ヘルパーT細胞により活性化して抗体産生細胞になると細胞質が発達する。このとき、特にどのような細胞小器官が発達するか答えよ。

問3 「ミドリムシは収縮胞を持っている」は正しいか、正しくないか。

問4 渦鞭毛藻は葉緑体を持った単細胞生物(原生動物界)である。渦鞭毛藻類の葉緑体は、一般的な植物細胞が持っている葉緑体とどう違うか説明せよ(問3の解説をヒントにしてひらめきの練習をしてみてください)。

 

問1

だいたい教科書・資料集・参考書に載っている胚葉由来は…

・・・ですよね。副腎髄質が何胚葉由来かは載っていません。じゃあ、これ、どうするのでしょうか? 「ひらめき力」で解くのです。では、「ひらめき」とか「ひらめき力」って何でしょう? それは…

・・・となります。つまり知識がなければひらめきようがないわけですね。やっぱり生物は暗記科目なわけですね。

では、ここではどんな知識とどんな知識をくっつければ解答を導くことができるのでしょうか?

まず、副腎髄質は何をするところでしょう? それは「アドレナリンを分泌するところ」ですよね(←これは暗記事項です)。ここで、「そういえばアドレナリンって、ノルアドレナリンとどう違うの」って思ったことありませんか? ノルアドレナリンは「神経伝達物質の1つ」ですよ(←これも暗記事項)。実はアドレナリンとノルアドレナリンはかなり似た物質です。その作用も似ています。で、神経細胞は外胚葉由来ですよね(←これも暗記事項)。ここから…

「神経細胞は外胚葉由来でノルアドレナリンを分泌する」→「ということはノルアドレナリンと似た物質を分泌する副腎髄質は神経細胞と同じ胚葉由来なのではないか?」 とひらめくわけです。

解答:外胚葉由来

 

さて、ここまでくると、そうですよね。「じゃあ副腎皮質は?」って、なりましたよね。副腎皮質は何胚葉由来でしょう? ひらめくでしょうか? やり方は副腎髄質の場合と同じですよ。解答は次回のお楽しみ♪ それまでに考えてみてください。

 

問2

これもやはり「抗体産生細胞では〇〇という細胞小器官が発達している」なんて教科書・資料集には書いてありません。やはり「ひらめく」のです。さあ、やってみましょう。

「抗体産生細胞は抗体を分泌する」→「抗体はタンパク質でできている」→「分泌用のタンパク質は小胞体に付着したリボソームで合成され、ゴルジ体で修飾されて、エンドサイトーシスによって分泌される」…と知識がつながるはずですが、どうだったでしょうか?

解答:リボソーム・粗面小胞体・ゴルジ体が発達する。

 

問3

これは少しハイレベルな知識が必要ですが、やってみましょう。

単細胞生物は「濃度差」が脅威である。これは前回説明しましたね。侵入してくる水で破裂してしまう。それを防ぐのが細胞壁でした。ところが単細胞生物なのに細胞壁を持っていないものがいます。その例は? そう、ゾウリムシですね。ではゾウリムシは破裂対策はどうしているのでしょう? そう、入ってきた水を収縮胞で汲み出しているのですね。 つまり、「単細胞生物は破裂対策を持っている」→「それは細胞壁か収縮胞だ」→「じゃあ、ミドリムシはどっちだ?」

・・・と、思考していくことになります。さあ、あと一歩ですね。ミドリムシに細胞壁はあるのか?ないのか? まあ暗記しておくしかないのですが、暗記の方法というものがあります。次の図を見てみましょう。

 

5界説の図ですね(←もちろん暗記事項)。この図、いろいろと暗記に使えるのですよ。今回は細胞壁を持つものの暗記法。

暗記のしかたの1つに「少ないものを覚えておいて、あとはここ」というのがあります。つまり、細胞壁を持っていない生物の方が少ないので、そちらを覚えてしまうのです。細胞壁を持っている生物はその残りの生物たちということになります。では、誰が持っていないのかというと、“動物”がつく生物たちです。つまり「動物界」と、原生生物界の「原生動物」のグループです。あとはみんな細胞壁を持っているので暗記する必要はありませんね。

 

 

すると「そうか、ミドリムシは藻類だから細胞壁があるんだな」と思ってしまいますが、ちょっと待った。物事には例外がつきものです。実はミドリムシ、藻類なのですが細胞壁を持っていません。ではなぜ持っていないのでしょうか? それはミドリムシはどうやらもともと原生動物だったらしいのです。だから細胞壁がない。それが単細胞藻類を取り込んで葉緑体にしてしまった。光合成をするようになってしまったので、定義上原生動物に入れられない。そこで藻類に編入となったわけです。これはツノモなどの渦鞭毛藻類も同じです。それが証拠にミドリムシや渦鞭毛藻類の中には光合成をするくせに他の生物を捕食するものもいます。しかも両者とも鞭毛をもっていて動き回るし(←光合成をする生物らしくないですね)。というわけで、次のようにひらめくことになります。

「単細胞生物は破裂対策を持っている」→「それは細胞壁か収縮胞だ」→「ミドリムシは細胞壁がない」→「ミドリムシは収縮胞を持っているはずだ!!」

 

問4

一般的な植物の葉緑体と渦鞭毛藻類の葉緑体の違い? いったい何を書けばいいのでしょう? まず一般的な植物の葉緑体の特徴は? まあこんな感じですよね。

重要な特徴は、外膜と内膜の「二重膜である」ことですね(←もちろん暗記事項)。このように「この細胞小器官は粒子構造か、膜構造か? 膜構造なら一重膜構造か、二重膜構造か?」はよく問われます。で、葉緑体は二重膜構造なのですが、どうして二重膜なのでしょうか? そう、もとはシアノバクテリアだったから。それが別の細胞に取り込まて葉緑体となったからですね。取り込んだ方の細胞の細胞膜と、シアノバクテリアだったときの細胞膜の合わせて二枚の膜でできているわけです。これと問3の解説の内容を知っていたならばひらめくはずです。問3のどの部分か? それは渦鞭毛藻類が「それが単細胞藻類を取り込んでそれを葉緑体にしてしまった」の部分。さあ、これでひらめきましたか? 単細胞藻類を取り込んでそれが葉緑体となったとき、その葉緑体は何枚の膜でできていますか? 図を描いて考えてみると…

 

そう、四枚ですね。だから葉緑体は四重膜構造になるはずですね。ただし、どうしたわけか実際には三重膜構造~五重膜構造までいろいろあるのですが、諸説あるのでここでは省略。なお、この問4はひらめきの練習なので、そこまで答えられなくてもOK。

解答例:一般的な植物の葉緑体は二重膜構造だが、渦鞭毛藻類の葉緑体は二重膜になっていない。

☆「大堀の参考書「大堀先生、高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」を持っている学生さん、読んでいて「何か知識がつながるなあ」って感じがしませんか? それは「ひらめき力」がついてきている証拠ですよ(^0^)/

☆代ゼミの大堀の講義では、このような「ひらめき力」の練習を知らず知らずにうちにさせられていきますよ。大堀の講義を受講する予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね♪

 

生物の勉強法(その3-2)「生物学的思考」を「生物学的反応」に昇華させよう!!

前回に続いて今回も「生物学的思考」って何? という話です。

さっそく次の例題を解いてみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

では問1から。

みなさんは問題文を読んでどう反応したでしょうか? 前回の解説からなんとなくはわかっていますよね。「リピッドキャリアーなんて知らない、だからこの問題は解けない」じゃあないですよね。学生が「リピッドキャリアーなんて知らない」のは出題者だってわかっています。そうじゃなくて、「生物学的思考」ができるかどうかが試されているのです。

では、この問1で必要な「暗記事項」、「生物学的思考」を説明していきますね。

みなさんは細胞膜の構造は知っていますよね? 知らなかったら、これは前々回で出てきた「①必要なことがまだ暗記し切れていない」の部分に相当します。急いで暗記しましょう。

 

 

 

 

 

さて、図を見てわかる通り、細胞膜の主成分はリン脂質です。図にはありませんがタンパク質(イオンチャネル・キャリアー・ポンプ・受容体など)も成分として含まれているのは知っていますよね? で、タンパク質を除くリン脂質だけの部分を「リン脂質二重層」と表現します。さてこのリン脂質、親水性の部分と疎水性の部分があるわけです。

はい、まずここ!! ここから「細胞膜を通過するのって大変だなあ」と思わなくてはならないのです。だって親水性の物質なら疎水性の部分を通過しにくいだろうし、疎水性の物質なら親水性の部分を通過しにくいでしょう。親水性の物質であっても疎水性の物質であっても細胞膜は通過しにくいのです。ただし、ここでちょっと注意。「脂肪やステロイド(どちらも疎水性の物質)は細胞膜を透過する」のです(これは暗記事項なので覚えておきましょう)。どういうわけか、疎水性の物質は親水性の部分を通過してしまうのですね。暗記しておいてください。そしてもう1つ、「親水性の物質は通過できない」も暗記事項です。例えばグルコースやアミノ酸、そして水分子などは細胞膜を透過できません。だからこそ細胞膜にはグルコース・アミノ酸を輸送するためのタンパク質(キャリアー)や水分子を通すためのアクアポリンがあるわけです。まとめると…

 

 

次に「細菌の細胞壁の成分はペプチドグリカンである」というのは知っていますよね。これも暗記事項。なのですが、ではペプチドグリカンはどんな物質でしょうか? 「そんなの習ったことないから知らない」と思いましたか? でもこれからは「自分の持っている知識をフルに使って考えるクセをつけましょう」。つまり、「ペプチドはペプチド結合のことかな? ということはアミノ酸が含まれているのかな? そしてグリカはグリコ(=甘い)が活用したもので糖のことかな?(←知らなかったら知っておきましょう)。ということは、ペプチドグリカンはいくつかのアミノ酸といくつかの糖からできているのかな」という具合です。こういうクセをつけましょう。すぐにあきらめないで、自分が持っている知識をフル活用して考えるクセをつけましょう(←ということは生物では知識がとっても大切。ガンガン暗記してくださいね)。さて、アミノ酸と糖ですから、親水性のものが多いですね(←実際にペプチドグリカンを作っているアミノ酸と糖は親水性です)。ということは、細胞壁の材料は基本的には細胞膜を透過しないのです。

さて、ここまでくればだいぶ見えてきましたね。ここで必要な「生物学的思考」は次のようになります。

 

 

 

細胞壁の成分はペプチドグリカンだ→水溶性なので細胞壁は透過できないはずだ→それが通るというのだから「リピッドキャリアー」はそれを可能にする物質らしい。

ただし気を付けたいのは、透過させるのではないのかもしれません。リピッドキャリアーは、エンドサイトーシスによって細胞外へ分泌することを可能にする物質なのかもしれません。そこでその辺はぼかして「透過」ではなく「通過」くらいにして解答する方が無難でしょう。

解答例:親水性・疎水性両方の性質を示す細胞膜の通過を可能にする。

次に問2。

「『抗生物質によって細菌がどんなふうに死滅するか』なんて習っていない」というのは通用しないのはもうわかっていますよね。ではここで必要な「暗記事項」「生物学的思考」は何でしょう?

細菌って、どこでどうやって暮らしているのでしょう? 例えば土壌細菌。亜硝酸菌や硝酸菌って知っていますよね。彼らは土壌中にいるものが多いのですが、土壌中のどんなところにいるのでしょう? 土の粒子の上に乗っているのでしょうか? 答えは水の中。土壌は水分を含んでいますよね。ミクロのレベルで見ると、土の粒子と粒子の間は水で満たされているのです。その水の中を浮遊している(鞭毛をもっている種は泳いでいる)のです。

次は細胞壁の話。植物が細胞壁を持っているのは知っていますよね。ではなぜ持っているのでしょうか? 理由はいろいろありますが「植物体を丈夫にするため」というのが一番でしょうね。植物は陸上の生物です。重力がかかりますから、それによってつぶれないように全体を頑丈にする必要があります。もっとも細胞壁だけでは重力に逆らえないので「木化」という現象も見られます(「木化」の説明は別の機会で)。

では細菌にはどうして細胞壁があるのでしょうか? これを講義中に質問すると「形を保つため」とか「丈夫にするため」とかいろいろ答えてくれるのですが、そんな解答をするようでは「生物学的思考」が不足しています。単細胞生物は常に「細胞内外の濃度差」という脅威にさらされているのです。これがここで必要な「生物学的思考」です。もうわかりますね。細胞内外で濃度差(ただしくは浸透圧差)があると水が移動するんですよね。細胞内の方が細胞外より濃度が高いと、細胞内に水が入ってきてしまう。最後には破裂してその細胞は死にます。

 

 

というわけで、細菌(←単細胞生物ですよ)が細胞壁を持っているのは「破裂防止」のためです。

ここで改めて問2の問題文を読んでみましょう。「細胞壁は内側から常につくられ続けていて、外側から崩壊し続けている。それによって常に20層くらいになっている」。ここでペニシリンは細胞壁の合成を阻害するわけですから、「細胞壁は外側から崩壊するだけ」になってしまいますね。やがて薄くなってついにはなくなる。すると、濃度差で水が入ってきて破裂して死滅するのです。

ちなみに、細菌内部の濃度はどんなものなのでしょうか? 大腸菌は20~30分に1回分裂します。ということは「その内部ではものすごい勢いで化学反応が起こっているのでは?」と想像できませんか? 従って、その内部には様々な物質が高濃度で詰まっていると考えられます。

解答例:細胞壁が合成されなくなるため、外側から崩壊するだけになる。このため、やがて細胞壁に穴が開き、濃度差で侵入した水によって破裂する。

 

☆「生物学的思考」は、大堀の参考書「大堀先生、高校生物をわかりやすく教えてください(上巻・下巻)」に惜しげもなくふんだんに書いてあります。持っている学生さんは、もう一度じっくり読みなおして、どの部分かを探してみましょう。

☆代ゼミの大堀の講義では、このような「生物学的思考」を君たちの脳にどんどんインストールしていきます。やがて「思考」ではなく瞬間的に「反応」できるようになってきます。「生物学的思考」→「生物学的反応」。ここまで持ってこれれば、生物の偏差値は簡単に70を超えます。大堀の講義を受講する予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね。

 

生物の勉強法(その3-1)「この問題、何を聞いているのかがわからない」の原因は?

今回のテーマは、次の4つの項目のうちの2ですね。

2.「解説を読むとわかるけれど、どうしてそれに気がついたの?」

この項目、ちょっとわかりにくいですかね。次のように言い換えるとわかるでしょうか?

「この問題、何を聞いているのかなあ? 何を答えたらいいの?」となるでしょうか。

こうなってしまう原因は次の2つです。

①必要事項が暗記しきれていない。

②生物学的思考力が不足している。

①なのですが、これは前回説明しましたね。もっと暗記すればいいわけです。

問題は②ですね。「生物学的思考」って何でしょう?

では次の例題を解いてみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、どうでしょう?「『この構造の現れ方』って何?」「ちょっと何言ってんのか

わんない」と思ったでしょうか。それは生物学的思考が不足しているからです。

ここでちょっと次の図を見てください。

 

 

 

 

 

 

 

 

昆虫とヒトには共通の祖先(X)がいました。しかし大昔に分岐して、今は昆虫とヒト

という全く違う種になっているわけですね。ところで、どちらの種も共通して

センサー細胞を持っています。さて、みなさんはこの図を見てどのように感じた

でしょうか? 「センサー細胞って何? そんなの習ってないから知らない」

と感じたでしょうか?でも、そこじゃあないんですよ。

皆さんがセンサー細胞を知らないのは分ってます(「センサー細胞」というのは

消化管内壁にあって毒物などをキャッチする細胞です。知らなくてかまいませんよ)。

こんなとき、出題者はそこを聞いているのではないのです。では何を聞いているのか?

それは「共通祖先(X)がセンサー細胞を持っていたから、現在でも昆虫とヒトが

センサー細胞を持っているのか」、それとも「Xはセンサー細胞を持っていなかった

けれど、それぞれ違う進化の過程をたどる間に偶然同じ細胞を持つに至ったのか」

…と考えることができるかを試しているのです。

つまり、「子孫(Y・Z)が同じ構造アを持っている」とき…

 

・・・それは「共通祖先(X)が構造アを持っていたからその子孫たち(Y・Z)も

構造アを持っている」のか、それとも「共通祖先はその構造を持っていなかった

けれど、それぞれの進化の過程で偶然同じ構造を持つに至った」のか…と瞬時に

反応せよ、ということなのです。

これが生物学的思考の1つなのです(生物学的反応と言ってもいいですね)。

前者の例には、「鳥類と哺乳類はどちらも脊椎を持っている」というのが

ありますね。それは「鳥類と哺乳類の共通祖先の魚類の段階で脊椎を持っていたから」

なわけです。後者の例には「イカ・タコも脊椎動物もカメラ眼を持っている」という

のがありますね。それは「イカ・タコと脊椎動物が進化の過程でたまたまカメラ眼を

獲得した」わけですね。

では、改めてさっきの問題を見てみましょう。

もう何を聞いているのかわかりますよね。

図1・2それぞれは「環形動物と節足動物はどちらも体節構造を

持っている」が、それは「共通祖先が体節構造を持っていたから」なのか、

それとも「それぞれの進化の過程でたまたま体節構造を持つに至った」のか。

それぞれどちらでしょうかと聞いているのです。

図1の場合、環形動物と節足動物の共通祖先であるCの段階で体節構造ができた

と考えるのが自然ですね。

Aの段階で体節構造ができたのであれば扁形動物も軟体動物も体節構造を持って

いるはずです。Bの段階で体節構造ができたのであれば、軟体動物も体節構造を

持っているはずです。

図2の場合、体節構造を持つ環形動物と節足動物の共通祖先はDです。この段階で

体節構造を持ったとすれば、扁形動物も軟体動物も体節構造を持つはずです。

EやFの段階で体節構造ができたのだとすると、節足動物は体節構造を持たない

はずです。従って図2の場合は、環形動物はFの段階で軟体動物と分岐した後に

体節構造を獲得し、節足動物はDの段階で扁形・軟体・環形動物と分岐した後に

体節構造を獲得したと考えるのが自然です。

つまり、「環形動物・節足動物それぞれの進化の過程でたまたま体節構造を持つに

至った」と考えるのが自然です。

解答例:

図1の場合、環形動物と節足動物の共通祖先の段階で体節構造が現われたと

考えられる。図2の場合、環形動物の体節構造は軟体動物と分岐した後に、

節足動物の体節構造は、扁形・軟体・環形動物と分岐した後に現われたと

考えられる。

 

さて、この「生物学的思考」、とても大切なので次回も例を交えて説明しようと

思います。

☆「生物学的思考」は、大堀の参考書「大堀先生、高校生物をわかりやすく

教えてください(上巻・下巻)」に惜しげもなくふんだんに書いてあります。

持っている学生さんは、もう一度じっくり読みなおして、どの部分かを

探してみましょう。

☆代ゼミの大堀の講義では、このような「生物学的思考」を君たちの脳に

どんどんインストールしていきます。大堀の講義を受講する予定の学生さん、

楽しみにしていてくださいね。

生物の勉強法(その2)「解説を読んでも何を言っているのかわからない」の原因は?

さて前回は「ダメな勉強法のパターン」の1つを示しました。その中で、

次の4つの項目・・・

 

 

 

 

・・・をあげました。生物の成績を上げる(偏差値を60台の後半にのせる)には

これら4つを解決する必要があります。

今回は1.「解説を読んでも何を言っているのかわからない」の原因を

探ってみましょう。

原因①必要なことがまだ暗記し切れていません。

原因②生命現象が正しく理解できていません。

例えば、問題集の重複受精の解説に

「重複受精の利点は『胚乳に集められたエネルギーを胚発生に有効に利用できること』

である」。と書いてありました。これ、何を言っているのかわかりますか?

「胚発生に有効に利用できる」って何ですか? 何がどう有効なんですか?

まずは「①必要なことがまだ暗記し切れていません」からいきましょうか。

・種子の中には胚と胚乳が詰まっている。

・胚は植物体の赤ん坊である。

・その赤ん坊である胚が育って光合成を始めるまでに必要なエネルギー源が胚乳である。

つまり胚乳は、植物体の親が子どもである胚に持たせたお弁当のようなものである。

・胚乳はもともとは中央細胞という細胞である。

これらのことは暗記されていましたか? だいたい偏差値が50後半以上の人なら

知っていましたよね。

次に②「生命現象が正しく理解できていません」です。

・裸子植物では、卵細胞が受精しなくても中央細胞が栄養分を貯め込んで胚乳になって

しまいます。つまり子どもができなくても子どものためのお弁当を作ってしまうのです。

これは勿体ないですね(=エネルギーが効率よく利用されていない)。

そこで進化した被子植物では「卵細胞だけでなく中央細胞も受精する」ようにした

のです。すなわち、中央細胞は受精したときだけ栄養分を貯め込んで胚乳になるのです。

ちょっと中央細胞になった気持ちで考えてみましょう。卵細胞が受精したときだけ

(=子どもができたときだけ)胚乳になりたいわけです。でも、卵細胞が受精したかどうか

なんてわかるわけがありません。眼で見て確かめることもできないし、卵細胞が「私は

受精しましたよ」なんて教えてくれるわけでもありません。では、どうすれば卵細胞が

受精したことを知ることができるのでしょうか。それは自分も受精すればいいのです。

受精するには花粉からの精細胞が必要です。ということは、「中央細胞が受精した」と

いうことは「花粉から精細胞が送り込まれてきた」ということになります。とうぜんの

ことながら、卵細胞も受精したはずです。このように「中央細胞が受精した」という

ことは卵細胞が受精した(=子どもができた)という合図になるのです。だから中央細胞は

受精したときだけ栄養分を貯め込んで胚乳になる。このようにして子どもができたとき

だけ栄養分を貯め込んで胚乳を作るのです。

さあ、ではもう一度さっきの文を読んでみましょう。

「重複受精の利点は『胚乳に集められたエネルギーを胚発生に有効に利用できること』

である」。

意味、わかりますよね。「有効に利用できる」というのは、「裸子植物に比べて」

ということだったのです。

「生命現象正しく理解する」ってどういうことかわかってもらえたでしょうか。

このような「正しく理解する」を積み重ねていくと、問題集の解説の意味がよくわかる

ようになってきます。問題を解けなくても、解説の意味が分かれば力がついてきます。

次回は2「解説は分るが、どうしてそのことに気がついたのか?」の原因をさぐって

みますね。

☆前記の重複受精の説明は、大堀の参考書「大堀先生 高校生物をわかりやすく教えて

ください(上巻)」の526ページにもっと詳しく載っていますので、持っている学生さん

は確認しておきましょう。

☆代ゼミの大堀の講義は、このような「正しく理解する」内容がてんこ盛りです。

大堀の講義を受講する予定の学生さん、楽しみにしていてくださいね。